リフォーム詐欺や悪徳業者から身を守る
- 10ken ie
- 7月3日
- 読了時間: 6分
この仕事をしていると、この建築業界(の一部)にはよくもまぁこんなにも悪意がはびこっているものだなと呆れるやら悲しいやら怖いやらで、なかなかに凹みます。
彼らの悪意の原動力は、お金、度が過ぎた利益欲求…でしょうか。
すべからく企業は、利益追求団体ですから提供サービスに正当な対価を求めるのは当然です。ほとんどの企業は、利益欲求と公益性(やら競合対策やら常識・良心・商慣習etc…)を天秤にかけ、バランスをとって頑張っていますよね。だからこそ、物価高だろうが人件費高騰だろうが、ギリギリまで価格転嫁を渋り、止むを得ず値上げする時も、それはそれは申し訳なさそうに眉間にしわ寄せ値上げを宣言しています。だからこそそれを知り、ときには企業側の一員でもある人々は、「企業の良心」を信じ、企業と付き合っています。
ですが、悪徳と評される彼らにとって、正価の4~50%増しや100%増しの暴利を貪るのは、朝飯前です。
たまにニュースで20万円程度の工事に450万円請求された、などメチャクチャな数字が躍る事がありますが、世に知らされている被害は、氷山の一角なのかもしれません。なぜなら消費者側が、適正工事や適正価格を知らず、どんな工事が実施されたかすら知らないからです。
Q:じゃぁ、適正工事や適正価格ってどうやって知るのよ!?
A:すみません、分かりません。
はぁ!?と思われるかもしれません。もちろん、トンデモ価格やトンデモ工事はすぐ見抜けます。が、実は同業者ですら少しの暴利や少しの手抜きは、見落とすことがあるのです。現場ごとに状況が異なるため、工事した者にしか語り得ないナニカがある。それくらい分かりにくい世界なのです。
こうして消費者側の期待と信頼を逆手にとる業者は後を絶ちません。なぜ?…上記のように消費者側と業者側に越えがたい知識情報量の格差があるからではないでしょうか。
Q:こんなに情報があふれる社会でも、消費者側の知識が業者側を上回ることは不可能?
A:まず一般的住宅1軒あたりの部品点数は、自動車に近い2万点前後と言われています。精度やサイズが異なるにしても、把握管理すべき情報量は、あまりに広大です。自動車評論家でもボルト使い分けの意味や、製鉄所の精錬技術、制御コンピューターのソースコードなど知る由もありません。
住宅もいまや人の住むハコではなく、快適と頑強を競う技術応酬の戦場です。断熱(メッチャ高度技術)や耐震性(メチャメチャ高度技術)は言わずもがな。例えば「換気」ひとつ取っても季節気候地域差分を計算し熱損失を計算し当局指針に合致させた流路設計に膨大な手間をかけ、湿度抑制対策にカビ細菌研究から換気システム開発まで、研究フィードバック資料で開発室の棚は埋まり、設計職も営業職も大工までも一緒くたに勉強会→仕事→勉強会→仕事の日々です。
つまり、慌てて付け焼刃のネット情報に触れた程度で敵う相手ではないのです。
なかには消費者を守る盾としての制度がいくつか作られています。例えば、情報格差著しい医療の世界でもかつて搾取を目論む連中がいました。ただ、早く(1958年)から全国一律の診療報酬薬価料金体系が敷かれ、医療保険制度と相まって悪徳医師がはびこりにくい素地が、段階的に作られています。複雑な工業製品も、JIS規格やPL法などの制度監視により粗悪品を市場から駆逐する取り組みがなされ、国産品に関しては安心して商品を吟味できますよね。
ところが…です。建築業界には今なお魑魅魍魎が、うじゃうじゃいます。
ゼロから生み出す新築は、工業製品の監視制度に似て粗悪品質の排除が、実はかなり進んでいます。問題は、リフォームなどの補修再生蘇生を試みる分野です。こちらは、既存体を治すという意味で、医療に近い概念かもしれません。ただ、この分野には医師免許や医療保険制度のような国家監視システムがあまり整っていません。
人口減少の昨今、建築業界は新築から改築に重心を移しつつあります。いずれは制度も整い明朗会計が当たり前になるかもしれません。
いずれは。
問題は、今です。今、どうやって悪徳業者から身を守るのか。
じゃあどーすりゃイイんだよ、という声にお答えするならば、せめて自分の家の現状だけでも把握してほしい、と考えています。建築の勉強を慌ててしたところで、さほど彼らに対抗する武器にはなりません。ならばせめて業者の言われるがままに踊らされないよう、「あなた方より私の方が自宅の現状に詳しい!!」と言える状態になっている事。
点検屋のお前にとって都合の良い回答だな!?と言われそうですが、間違ってはいないと確信を持ってそう答えます。
ほとんどの方が、自宅の「現状」を把握していません。なかには「何年か前に○○修繕の時に色々みてもらったから大丈夫だよ」などと言われることもあります。それって「現状」でしょうか。
毎年ご自身やご家族は、人間ドックや検診で定期的に健康チェックをされていますか。去年やったからしばらくイイや、次は3年後かなー、とふんわり先送りする勇気を私は持っていません。家も同じことが言えます。
例えばシロアリ。人間でいえばガンやウイルス性疾患でしょうか。春にチョロッとやってきては、あっという間に数万匹の巨大コロニー(群体)になり主要構造を侵食破壊します。
例えば雪が積もれば、嵐が吹けば、人間でいうところの外傷を負うこともあります。そこから破傷風ならぬ浸水劣化が主要構造をボロボロにする事も珍しくありません。
今年の家は、去年の家と変わりはありませんか。
そこに見知らぬ業者が現れて「近所で工事してて気が付いたンすけど、お宅んトコの○○ヤベーっすよ?一回マジで見ときますヨ!?」からの「実際見てみたら最初思ってたのよりヤベーっすわ!すぐ直さないと家、終わっちまいますよ!」からの「見積○○万円っすね。すぐ工事ヤんないと!」からの「実際施行してみたら※※も××もヤベーんで直しときました。お支払いは〇〇〇万円っす」
…こんな流れならまだ分かりやすいし警戒もできますが、これが親切丁寧口調で語ったり別の切り口で不安にさせたりと、手口は様々かつ進化しています。ただ、状況把握さえできていれば彼らが真摯な指摘をしているのか嘘を騙っているのかは、すぐに判別できます。どう相手するにせよ「○○も※※も緊急性が無い事は知っているし、××についても自分で信用できるところに依頼するので結構です」などと返されれば彼らに「この家はダメだ通用しねぇ」と感じさせるに十分な防盾になってくれます。
それでも喰いさがってきたり、どうにも困った事態になるようでしたら、私共にご相談下さい。なんらかのお役にたてると思います。
まとめ:
Ⅰ. 業者に対し、理論武装では勝ち目がない。
Ⅱ. 自宅の現状把握だけは「業者よりも知っている」という状況をつくる事ができる。
Ⅲ. 知らない事が不安を生む。彼らは不安をあおり付けこむ。知っていれば、彼らの出る幕はない。
自然がもたらす試練も怖いけど、やはり人間が一番怖い…かも。備えておきましょう。
Comentarios